「この薬は効果が確認できないから市場から撤退させます」。米国ではこう判断されたがん治療薬が、日本では今も「推奨される治療」として使われている。少なくとも23年7月時点で7件確認された。この驚くべき事実は『Investigational New Drugs』に受理された筆者らの最新の調査により、日米間の医薬品規制制度の違いに起因することが明らかになった。


 患者の命を左右する可能性のある治療薬において、なぜこのような国際的な「ねじれ」が生じているのか。今回は、米国で承認取り消しとなったがん治療薬の日本での使用状況に関する調査結果を報告する。


 米国食品医薬品局(FDA)の「迅速承認」制度である。重篤な疾患に対する新薬を早期に患者に届けるための仕組みで、腫瘍の縮小率などの「代替評価項目」に基づいて承認を与える。その代わり、後の「市販後確認試験」で、本当に生存期間が延長するなどの臨床的効果を確認することが条件だ。