現役世代が支払っている保険料の負担軽減が政策課題として浮上している。予め私見を述べておくと、加入している健康保険によって保険料率に違いはあるが、マクロ経済的に見た場合、医療費抑制をこれまで以上に強めなければならないほど、負担が限界に達している訳でも、医療保険財政が行き詰っている訳でもない。


 しかし、厚生労働省は、高額療養費制度の自己負担限度額を引き上げる提案を行った際、その理由として被保険者の保険料負担の軽減を挙げていた。25年度予算案の衆議院通過を前に与党と三党合意を結んだ日本維新の会は、医療費を最低4兆円削減し、現役世代1人当たりの社会保険料負担を年間6万円引き下げるという非現実的な提案を行っている。


 このように保険料負担に注目が集まるなかで、現役世代から疑問視する声が上がっているのが後期高齢者支援金である。


 75歳以上を対象とした後期高齢者医療制度は08年度に施行されたが、給付費の約1割を後期高齢者自身が納める保険料、約5割を公費(国:都道府県:市町村=4:1:1)、約4割を74歳までが加入している医療保険者からの支援金で賄う仕組みになっている。24年度予算ベースで後期高齢者医療制度の給付費は18.4兆円(患者負担の1.6兆円と合わせて医療費総額は20.0兆円)であり、後期高齢者支援金は7.4兆円となっている。公費が投入されている制度では、後期高齢者支援金の一部にも公費が含まれているが、それぞれの被保険者が納める保険料が後期高齢者支援金の財源全体の約9割を占めている。


 厚労省が示している21年度の制度別の財政状況は図の通りとなっている。健康保険組合と共済組合を見ると、被保険者が納めている保険料のうち、自分たちの給付費に充てられるのは約半分である。それと概ね同額が後期高齢者支援金と、65〜74歳の前期高齢者に係る財政調整のための納付金(国民健康保険への交付金)の財源となっている。つまり、納めている保険料の約半分が自分たち以外のために使われていることになる。協会けんぽでは、その割合はやや低くなっているものの、後期高齢者支援金と前期高齢者納付金で支出の4割弱になる。


 現役世代の保険料負担が増えるにつれて、納めている保険料のかなりの部分が他制度の高齢者のために使われる構造になっていることへの納得感が大きく揺らいでいるのである。