日本高血圧学会から新たな高血圧ガイドラインの叩き台が公表された。降圧目標は前回ガイドライン同様、基本は診察室血圧「130/80未満」が維持された。米国心臓協会(AHA)/心臓病学会(ACC)と欧州心臓病学会(ESC)と、基本的に同じである。
一方、欧州高血圧学会(ESH)は原則「140/90未満」を維持(忍容性が良好であれば収縮期「130未満」まで降圧)。米国内科学会(ACP)/家庭医学会(ACFP)のGLでは、60歳以上限定だが収縮期血圧「150未満」を推奨している(高リスクなら「140未満」も可)。
ESHが「140/90未満」に踏みとどまった背景には次のような算段があった。「130/80未満」目標降圧で「140/90未満」に比べ重篤心臓血管系(CV)疾患を抑制しても、絶対リスク減少幅は小さい。加えて、そのメリットを取りに行った結果、有害事象などで患者が高血圧治療を中止してしまうとかえってCVリスクが高くなる——。このような利害を天秤にかけた結果だった。
翻って降圧目標「130/80未満」維持を打ち出した今回の「叩き台」だが、「合併症のない高血圧患者を対象とした介入試験において、収縮期血圧 130mm Hg未満への降圧による予後の改善は明らかではない」と明記されている。エビデンスはないのだ。
その一方、より高リスクである、CV疾患2次予防患者などを対象とした無作為化試験などをメタ解析すると「130未満」目標降圧の有効性が認められるという。これが降圧目標を原則として「130/80未満」とする根拠のようだ。