20年の改正医薬品医療機器等法によって、薬剤師が調剤時に限らず、必要に応じて患者の薬剤の使用状況の把握や服薬指導を行う義務に加え、薬局薬剤師が患者の薬剤の使用に関する情報を他医療施設の医師に提供する努力義務が明文化された。具体的には調剤後のアドヒアランスの評価、有効性や副作用発現などを経時的に確認することや患者から得た情報を処方医などにフィードバックする役割も求められている。


 法改正を受けて21年からスタートした「専門医療機関連携薬局」制度と「地域連携薬局」制度は、調剤薬局の薬薬連携にとってチャレンジングな分野だ。24年8月末時点で、専門医療機関連携薬局は199件、地域連携薬局は4298件である。両方とも数は着実に伸びてはいるが、認知率はそれほど高くはない。


 専門医療機関連携薬局はがんやHIV、難病のような疾患を有する患者に対して、あらかじめ医療機関との間で対応要領を定めることとされている。そして、抗がん剤服用時などに、発熱などの有害事象が生じた際に、担当医への受診などの対応について助言することや抗HIV薬を服用する患者の場合に、他の併用薬等の情報をもとに、適切なHIV療法を選択できるよう支援することが期待されている。


 とくに抗がん剤治療に関する薬剤師の専門性の高さが求められていること、患者さんのプライバシーが保たれる店舗構造が必要なうえ、がん診療連携拠点病院の薬剤師との連携も必須である。終末期を含むがん治療に関わる支持療法、麻薬の取り扱いなども要求される。


 一方、地域連携薬局では、患者が抗がん剤治療(経口薬)を自宅で希望した時に活躍の場が出てくる。この際は、外来がん認定薬剤師の設置が必要である。この資格は日本臨床腫瘍薬学会が認定するもので、地域でのがん治療において、患者とその家族をトータルサポートできる薬剤師としての役割が期待されている。


 治療は長期に渡るケースも多々あり、再発、有害事象による薬剤減量・休薬対応も含め、薬剤師はがん治療のさまざまなステージで、その知識が要求される。もちろん、がん患者の治療は薬剤師だけでは解決できない課題も多いため、いかに多種多様な部門と連携し、トレーシングレポートをはじめとした情報提供、つまり「見える化」を重視した活動が大事となる。


 患者ががん薬物療法をスタートする時に、投与される薬剤の種類、投与期間、治療限度額を含む患者負担などの説明が医療従事者に求められている。これまで院内の事情などで積極的に参画してこなかった薬剤師も、治療初期からの介入が望まれる。