1年やそこらで実現できない


 米国で医療機器業界最大のロビー団体である先進医療技術工業会(アドバメッド)は、医療機器や消耗品に対する関税免除を求めており、トランプ大統領が一次政権時に中国からの医療機器輸入を一部除外したと指摘する。現在計画中の関税は、研究開発投資を妨げ、レイオフや価格上昇、重要技術の不足につながると主張した。


 カナダへの輸出に依存している米国製造業者にとっても、今回の関税問題は頭が痛いところだ。カナダは米国に対して報復関税を決めており、それらの品目のコスト上昇につながり、欧州の代替製造業者へのシフトを促す可能性があるためだ。報復関税が発動されれば、米国製品や米国輸入品のコストが上昇するだけでなく、国際市場で米国製品を販売することも難しくなる。医療機器企業は、関税回避に向け、生産ラインの増設や再編成、土曜や夜間のシフト追加など、国内製造施設をより多く活用する方法を検討しているという。


 米国病院協会も、医療機器を関税の対象外とするよう政権に要請した。針や注射器、パルスオキシメーター、麻酔器具、血圧計などの一般的な医療用品の中国からの流入が妨げられると、手術や患者の診断・監視に支障をきたす恐れがあるとした。


 ボストン大学のコルル・ヴァルン教授はこの問題について「製造業を米国に戻すことは良いことのように聞こえるが、言うほど簡単ではない」と問題の複雑さを指摘した。生産拠点の移転には多額の投資が必要で、企業は同じ品質と価格で材料を調達したり、同じ人件費で生産したりすることができなくなるかもしれない。サプライヤーはノウハウやインフラをすでに構築してしまっている、これまでと同じ利益率で同じ生産量を確保するのは簡単なことではないし、1年やそこらで実現することでもない」と説明した。