■制度の趣旨説明や薬局での“医学的判断”は


 こうした背景のもと、厚労省が24年3月~4月にかけて制度の枠組みや具体的な対象医薬品を示し、具体的な姿が少しずつ見えてきた。


【対象医薬品の考え方】保険局医療課の事務連絡(24年4月11日付)では、以下3項目を全て満たすものを対象医薬品としている。今回の1,095品目は全体(約1,700品目)の約64%を占める。

(1)後発医薬品(GE)のある先発医薬品:いわゆる準先発品を含む。〔除外〕バイオ医薬品。

(2)組成および剤形区分が同一の品目、かつ「薬価基準へのGE初掲載からの期間」と「後発品置き換え率」で区分し、「初掲載から5年経過したもの」または「5年経過していないが置き換え率50%以上」のいずれかであること。〔除外〕5年経過しているが置き換え率1%未満の品目。

(3)長期収載品の薬価がGE薬価の最高価格を超えている:組成、規格、剤形ごとに判断。


【基本的な流れは二つ】保医発0327第10号(p.37~39)および第11号(24年3月27日付)をもとに、対象医薬品の処方から調剤・提供の流れを整理した〈図〉。この図は長期収載品の供給不足は考慮していない(図中にはないが保険薬局の在庫状況から、長期収載品に代えてGEを提供した場合は保険給付になると考えられる)。また、どのようなケースでも「長期収載品の選定療養」の適否を判断する前提として「患者に対して長期収載品の処方等・調剤に関する十分な情報提供がなされ、医療機関・薬局との関係において患者の自由な選択と同意があった場合に限られる」ことを見逃してはならない。

 新たな処方箋様式では「患者希望」欄が新設され、長期収載品の処方理由が明確化される。大枠として、銘柄名処方理由が「医療上必要」との判断に基づく場合は全額保険給付〈図中ケースA〉「患者希望」による場合は選定療養の対象となり患者に一部自己負担が生じる〈ケースD〉。自己負担分は、昨年末に財務相と厚労相が行った大臣折衝の結果、「長期収載品の薬価とGEの最高価格の差額の4分の1」とされた。また、選定療養を適用した場合、医療機関や薬局は、保険が適用される部分と自己負担分の徴収額を区分した領収書を交付する。


【問われる薬局薬剤師の真価】この二つの流れに加え、現場の実際を考慮した流れが複数ある。

 医師が「変更不可、患者希望のいずれにもチェックしていないにもかかわらず、長期収載品を(代表的製品名等で)銘柄名処方」あるいは「一般名処方」した場合、保険薬局で薬剤師の説明後に患者が❶GEを希望すれば全額保険給付〈ケースB〉。❷GEを希望したが薬局の在庫状況から提供困難で長期収載品を提供した場合は「患者希望」に基づくものではないため全額保険給付〈ケースC〉。一方、❸長期収載品を希望すれば選定療養の対象となり一部自己負担が生じる〈ケースD〉

 また、「患者希望」で長期収載品が銘柄名処方された場合も意思を再確認し、❹GEを希望した場合は全額保険給付になる〈ケースB〉

 さらに、薬局薬剤師が「患者が服用しにくい剤形」「長期収載費品とGE間の効能・効果の差異」などを理由に「GEでは適切な服用が困難」で「長期収載品を服用すべき」と判断した場合は、「医療上必要」の処方に準じて全額保険給付となる〈ケースA〉


 24年度の調剤報酬点数表では、薬学管理料の「かかりつけ薬剤師指導料」項目のうち「特定薬剤管理指導加算3-ロ 選定療養(長期収載品の選択)等の説明」に対して、対象薬の最初の処方時に1回5点を算定できるようになったが、ロの“説明”は単純ではない。


 保険医療機関や保険薬局は「長期収載品の選定療養」に関する十分な情報提供の一環として「制度の趣旨」を明示する必要がある。自己負担の大小が最大の関心事である国民が多い中、社会保障制度の持続性や創薬力強化など政策の大きな方向性をどう納得してもらうかは、大きな課題だろう。


 日本薬剤師会には、既に選定療養施行前の算定の可否に関する問い合わせが寄せられたことから、都道府県薬剤師会担当役員あてに日薬業発第93号(24年6月5日付)を発出。「選定療養の施行前・適用前に特定薬剤管理指導加算3の「ロ」(選定療養の対象となる長期収載品を選択しようとする患者への説明)に該当するとして算定を行うことは、現時点においては慎重に考えていただく必要がある」と釘を刺した。その理由の記述をかみ砕くと、「現状では診療・処方側とも環境が整っておらず、患者に対する十分な説明は難しい。今後、厚労省が示す(はずの)制度の詳細説明や計算方法を踏まえて保険医療機関・保険薬局での準備が進められていくので、現状での算定は控えてほしい」といった内容に読める。