社会実装につなげられるか
現場からは異業種である両者が目標や数値を明確にしていくことの難しさが聞かれる。「エンドポイントをどこに置いて何を見ていくべきかの設定に苦労しています」(鹿島営業)。また、「(デジタル技術は)若い世代でも活用の差が大きいことから、現状のサービス提供にどのように溶け込ませ、より便利にさせるかが課題」(順天堂看護師)と、医療現場への適応や高齢者に使いやすい使用感なども課題として挙がる。
現実的なサービスにしていくことの不安も聞かれる一方で、「医療と建築環境の新しいシナジーが生まれつつあります」(鹿島統括)、「(医療現場の)実際のご苦労を感じ、刺激を受けながら取り組んでいます」(鹿島研究者)と互いの理解が進む様子も感じられる。鹿島の根本氏は「(研究内容が)日々変化していくことに苦労しましたが、最近では、より現実的な方向に進みつつあるという実感を受けています」と前進を感じている。
左から浅岡大介医師、権藤尚氏、根本絢子氏。写真提供=共同研究チーム
2年目に入り、それぞれのテーマが実証研究へ舵を切り始めた。浅岡医師は今後の展望について、「可能性は無限大です。ただ、さまざまな課題があり、実際はやってみないとわかりません。最終的なゴールは社会実装に結び付けられるかですが、やってみないと何も始まらないという思いでやっています。後はやるだけなので、医療と建設のコラボレーションにより何か良い結果が出たらと思っています」と語る。
熊田梨恵