使いやすさをロボットで解決


 現在、企業と共同開発中のロボットのひとつが、冒頭でブラインドを操作した小型ロボット「見守りウィーゴ」(写真)だ。子供向けのプログラミング学習教材として活用されていたアンドロイドOS搭載のロボットをベースに、高齢者の在宅生活を支援する機能を備えている。その機能のひとつが、音声に応じた家電の操作や応答だ。


                                           

     「見守りウィーゴ」に話しかけると、さまざまな操作をサポートしてくれる


 すでにスマートスピーカーなどの操作支援デバイスが市場にあるが、「高齢者にとってはデバイスに話しかけること自体が難しい場合があります」。(同大医学部リハビリテーション医学講座研究員・近藤輝氏)。デジタルデバイスやIoT機器を使った「スマートホーム」が昨今のトレンドだが、設定が複雑で、若者や中年層には操作できても、高齢者にとっては操作しづらいことも多い。


 この課題を解決するために開発された「見守りウィーゴ」は、リビングテーブルに置いても場所をとらず、声掛けに応じてダンスを踊るなど、愛着の持てるデザインだ。RSHではこれまでに子どもサイズのロボットも開発していたが、現在は家屋内での使用やコストを考慮し、より導入しやすい小型ロボットを開発している。


 また、車いすを使う高齢者が家屋内で移動する際の課題のひとつが、乗り移りだ。従来の車いすでは、ホイールとベッドの隙間や、座面とベッドの高低差があるため、乗り移りが難しかった。さらに、腕や足を載せるサポート部分に殿部や足が引っかかりやすく、転倒も起こしやすい。介護者が乗り移りを支える時に腰痛を起こしやすいことも課題だった。


 新たに企業と共同開発した車いす型のロボット(写真)は、ホイールとベッドの隙間がなくなるように設計され、ベッドの高さに座面を合わせることもできるため、体をずらすだけで簡単に乗り移りができる。これによって、転倒の危険性や介護者の負担が大幅に軽減されている。また、「日本の住宅は欧米の家屋に比べて狭いことが多いので、適したサイズのロボットを開発する必要があります」(近藤氏)。この車いすは、全方向に移動できるコンパクトな設計で日本の住宅にも適したサイズだ。


                                                   

  ベッドの端にぴったり寄せられ、アームサポートが上がるので簡単に乗り移りできる


 ロボット以外にもさまざまな支援機器が共同開発されている。通常は指で測定する脈拍や酸素飽和度を、運動時にも測定しやすいように耳から測定できるサンバイザー型のウェアラブルセンサーが開発された。ビデオ通話によって遠隔から運動を提供できるシステムも開発され、コロナ禍では隔離患者へのリハビリテーションに活用された。また、電気の使用状況やオンラインコミュニケーションツールを使った際の表情から認知機能を推定する仕組みも開発中だ。さらに、実際の畳と同じ質感や衝撃緩和性能を持ちながら薄く設置しやすい床材や、一定以上の衝撃が加わると柔らかくなり転倒時の衝撃を和らげる床材など、安全な空間をつくるための多くの技術が企業と共同で開発されている。