10年ほど前に、EBM(Evidence-Based Medicine)という言葉を初めて目にしたとき、自分の英語力にいささかの自信をなくした。直訳して「根拠に基づいた医療」では、あまりにも当たり前であり、現在の医療が根拠のない医療になってしまうではないか。そんなことはないからこれは誤訳であろう。では、何と訳すのか…と戸惑ったのである。 しかし、これは杞憂に終わった。専門家に聞いたところ「科学的根拠に基づいた医療」と訳すという。今までの医療が科学的根拠に基づいていない場合が少なくないから、医療を科学的根拠に基づいたものにしようとする主張であり、運動だと教えられた。 そこで思い出したのは、日本の結核・臨床薬理学の先駆者である砂原茂一先生から聞いた「医療は経験主義 権威主義 経済主義に侵されている」という言葉である。砂原先生は40年前に、すでに医療の革新にはEBMが重要だ...
10年ほど前に、EBM(Evidence-Based Medicine)という言葉を初めて目にしたとき、自分の英語力にいささかの自信をなくした。直訳して「根拠に基づいた医療」では、あまりにも当たり前であり、現在の医療が根拠のない医療になってしまうではないか。そんなことはないからこれは誤訳であろう。では、何と訳すのか…と戸惑ったのである。 しかし、これは杞憂に終わった。専門家に聞いたところ「科学的根拠に基づいた医療」と訳すという。今までの医療が科学的根拠に基づいていない場合が少なくないから、医療を科学的根拠に基づいたものにしようとする主張であり、運動だと教えられた。 そこで思い出したのは、日本の結核・臨床薬理学の先駆者である砂原茂一先生から聞いた「医療は経験主義 権威主義 経済主義に侵されている」という言葉である。砂原先生は40年前に、すでに医療の革新にはEBMが重要だと洞