シリーズ『くすりになったコーヒー』


 WHO(世界保健機構)は、65歳以上の人を高齢者と定めています。そして経済先進国に対して、アルツハイマー型認知症(AD)に備えるよう呼びかけました。日本の厚労省は1月末、日本版AD国家戦略「新オレンジプラン」を発表しました(詳しくは → こちら)。


「新オレンジプラン」は七つの柱でできています(「コーヒーを飲みなさい」がないのは残念!)。



 誰もがプランの実現を望んでいます。しかし現実は、目玉のはずのAD研究プロジェクト(J-ADNI)が、患者データを改竄して大揺れです(詳しくは → こちら)。


 医薬開発の現場では嘘が尽きません。嘘の原因は、国から多額の研究費を騙し取る悪知恵・・・そんな研究に何の意味がありますか? 嘘が高じればチンプンカンの中味になってしまいます。さてさていくらぼやいても仕方ありません。「後悔は先に立たず」とならないうちに、コーヒーについて真面目に考えましょう。


●ADになりたくなければ、コーヒーを飲みなさい!


 病気にならないように気を配り、病気になったらすぐ治す・・・健康長寿PPKの極意で
す。ADにならない方策を見つけたら、自分で選んで自分で実行するのが一番。先ずはAD予防の8箇条を見直します(第170話を参照)。



●糖尿病予防では血糖値が大事だが、AD予防では脳内血糖値(脳糖値)が大事である。


 ADは脳の糖尿病と言われています(8箇条の1番)。食後高血糖は首から下だけではありません。脳糖値も高めます(高脳糖状態)。こんな状態が長引くと、脳神経が変性したり、死んでしまったりするのです。糖尿病につきものの末梢神経障害が脳(中枢)にも起こるということです。


 では、血糖値ならぬ脳糖値を低く抑える方法はあるでしょうか? 実に簡単なことです。血糖値を低くするだけで良いのです。甘いものを控える。ご飯を減らす。糖尿病と同じです。


 でもお断りしておきますが、甘いもの(砂糖)と炭水化物(ご飯、パン、芋、その他)を全部絶つという過激なダイエット法(例えば、アトキンス式)は危険です。TVなどで極端な脱炭水化物を勧める医者がいます。米国に多いBMI>27の超肥満者データを、スリムな日本人に当てはめる無責任な医者の言うことです。ちょっとだけ肥満(BMI<27)とか、ちっとも肥満でない人は真似しない方が無難ですよ。


●炭水化物を減らすなら、代替エネルギー源がないと危ない。


 そこで登場するのが、グルコースに替わる脳用エネルギー源の「ケトン体」。絶食して血中のグルコースが減ってくると、体は備蓄脂肪を分解して「ケトン体」を作ります。このケトン体がグルコースに替わって脳のエネルギー源になるのです。


●重ねて書きますが、代替エネルギーは部位限定、時間限定ですから、炭水化物0で頑張ると栄養失調のリスクが高まる。


 ADは、早ければ35歳から無症状で進行し、20年経って発症します。気づいたら還暦ということです。だから気長に予防する以外ありません(第171話を参照)。「過ぎたるは及ばざるが如し」、炭水化物0よりもバランス食が向いています。そのうえで、8箇条を実行すること・・・全員が実行すれば、AD患者は今の半分に減るのです。計算上は「新オレンジプランは悠々達成」となるでしょう。



●コーヒーのクロロゲン酸が、インスリン耐性を改善して、脳のエネルギー代謝を進めます(詳しくは → こちら)。


 高脂肪食で飼育しているマウスに、クロロゲン酸リッチなコーヒーエキスを飲ませると、インスリン耐性が改善して、脳のエネルギー代謝が活性化するという論文です。もう1つ、従来からクロロゲン酸には神経を保護する作用があると言われてきました。過去の論文を集めて再評価すると、クロロゲン酸は認知力低下を予防するとの結論に達します(詳しくは → こちら)。


 これまで肝臓、筋肉、悪性腫瘍で調べられてきた抗酸化物質の薬理学が、いよいよ脳を舞台に展開されます。現代社会のあらゆるストレスを柔軟に受け止める脳をつくること、それこそが「新オレンジプラン」、特に6番の達成可能な目標となるのです。


 最後にご参考まで、


●クロロゲン酸の適量を確実に摂れる商品は今のところ2つです。


1.(株)花王の「ヘルシア缶コーヒー・無糖ブラック」


2.Just Coffee at ワルツ社の「成分ブレンドコーヒー・爽」


(第231話 完)


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