シリーズ『くすりになったコーヒー』


●コーヒーを1日3〜5杯飲む人がアルツハイマー病(AD)になるリスクは、飲まない人の62%である(下図)。


 前回、第170話の「アルツにならない8箇条」も参照して下さい。



 健康人とAD患者を比べてみますと、健常人の血液にはカフェインが多いと報告されています。だからといって、カフェインがADを予防していると言うのは早とちりです。「ADになるとコーヒーやお茶を楽しむ心の余裕を持てなくなる」からかも知れません。まだ答えはありません。


●中年時代にコーヒーを飲んでいた人は、ADになるリスクが低い。


 この論文は信じてもよさそうです。


 信頼できる傍証証拠は動物実験でしょう。ラットやマウスにコーヒーを飲ませたり、コーヒーの成分を飲ませたりして、認知機能への影響を調べた研究です。いわゆる老人斑のでき方への影響も調べられました。


●実験動物の研究によれば、コーヒーとコーヒー成分は認知症の発症を抑え、老人斑の数を減らす。


 ADの新薬開発が遅れているため、AD認知症を少しでも遅らせる脳トレーニング(筆者は“脳リハビリ”と呼んでいる)が人気を呼んでいます。全国の「物忘れ外来」は何処も彼処も“AD型認知症になるまでの時間稼ぎ”を求める人で賑わっているのです。順番待ちの問い合わせも多いようです。


●ヒトは誰でも、認知症になる前に必ずMCI(軽度認知障害)を経験する。


 MCIを見逃さずに“脳リハビリ”に専念すれば、認知症までの時間稼ぎができます。「高峰カンファランス(第164話を参照)」で聞いた話では、国立研究機関での試算によると、「時間稼ぎは5年」が目標とのことでした。


 下図のグラフを見てください。年齢別AD発症率を「たった5年」だけ右へシフトさせるのです。「たった5年」と思われるかも知れませんが、医療現場の研究者にとっては夢のような数字なのです。でも個人的にはもっと延びてPPKまで・・・と思ってます。



 図をよく見てみますと、現在のグラフが右へ5年シフトすると、AD患者の発症率は半分に減少します。つまり全国の患者数が半分になる・・・これが夢の中味です。全体としては確かにそうなのですが、個人としてはADになるかならないか、一発一中で占ってもらいたい思いです。


●新薬登場に期待しつつも、危ないと気づいたら脳リハビリの努力が大事です。


 ただし、「コーヒーを飲みながら」ですよ。


(第171話 完)


追記:HAB研究機構の「おくすり情報(5月18日発行)」に、「脳リハビリ」と「アルツにならない8箇条」が出ています。HAB事務局へお問い合わせください。
〒272-8513 千葉県 市川市 菅野 5-11-13 市川総合病院 角膜センター内
電話:047-329-3563 FAX:047-329-3565


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