シリーズ『くすりになったコーヒー』
●科学には嘘がないから科学者になりたい。
「世の中には嘘が溢れているので、嘘のない科学の世界で働いて、人のためになりたい」と思って理系を選んだ・・・そういう人が大勢いるはずですし、青色ダイオードみたいに、もっともっとそうあってほしいものです。でも現実は簡単ではありません。
●医学の世界も嘘だらけ。
知らざあ言って聞かせやしょう、『浜の真砂と五右衛門が唄に例えし盗人の種は尽きねえ七里ヶ浜』・・・医者であろうとなかろうと、医学・生命科学を研究する人も、浜の真砂ほどいらっしゃいますから、大嘘つきが後を絶ちません。
●カフェインの臨床試験も倫理違反で絶体絶命
去る10月1日、厚生労働省は金沢大学が他の医療機関と共同で実施していた「カフェインを使う骨軟部腫瘍の臨床試験」を、先進医療から削除しました(詳しくは → こちら )。
以前にこのブログでも、「カフェインが抗癌剤の効果を強める」という金沢大学のお話をちょっとだけ紹介しました(第78話を参照)。今回の削除の原因は、カフェインが効かないとか、カフェインが危ないとかではなく、臨床試験の進め方に約束違反があったからのようです。
患者に「もしかしたら死ぬかもしれない」抗がん薬とLD50(50%致死量)に近い多量のカフェインを注射する臨床試験に、約束違反があってはどうしようもありません。「計画通りに実行しなさい」は薬事法に定められている倫理規範ですから、臨床試験関係者なら誰もが知っているはずです。それでも現実は五右衛門の言う通りで、盗人だの嘘つきだの種は尽きません。
●「カフェインが抗がん薬の作用を強める」は嘘か本当か?再評価の決着は持ち越されてしまった。
カフェインと抗がん薬の関係は今のところ不明のままとなりました。ついこの前、第206話に書いたように、「未熟児の無呼吸症」にカフェインが安全で有効な薬になったばかりです。なのに、今度はケチがついてしまいました。ですから今のところ「カフェインが古くて新しい偉大な薬になる」ためには、何度も何度も上手く行ったり失敗したりを繰り返すしかなさそうです。
それでも楽観的に見るならば、カフェインの効果が否定されたわけではありません。将来また別の人が別の立場で研究することを期待して、それまではカフェイン入りのコーヒーを飲みながら元気に待っていることに致します。
●う〜〜ん、それにしても残念だった!
最後にもう一言。コーヒーだって毒か薬か、善か悪か、何回となく繰り返して、ようやくここまで来たのです・・・。
(第220話 完)
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