シリーズ『くすりになったコーヒー』
10月1日は「コーヒーの日」です。コーヒーの限りなく深い効き目をお届けします。
●カフェインには、JCウイルス(進行性多巣性白質脳症の原因ウイルス)の増殖を抑える効き目がある。
こう発表したのは、北海道大学の澤洋文教授でした(詳しくは → こちら、論文は → こちら )。
澤さんの考えているメカニズムを図にしてみました。
では、C型肝炎ウイルスの場合はどうでしょうか?ヒントとして、C型肝炎が癌になる経過を解説した総説論文があります。
●C型肝炎ウイルスによる発癌は、C型肝炎を経て進行する場合と、C型肝炎を経ずに直接発癌する場合がある。後者では、細胞周期と癌抑制因子がウイルスに侵されている。
ここにも確かに細胞周期との関係が見て取れます(詳しくは → こちら)。
さて、前回のブログに「コーヒーはC型肝炎のペグ/リバ療法の効果予測因子である」と書きました。これが本当なら、医薬品であるペグ/リバとコーヒーを合わせれば、C型肝炎ウイルスを撃退する仕組みができそうです。澤先生のJCウイルスと同じように、カフェインが関係しているのかも知れませんが、それだけではありません。
先ず第1に、コーヒーそのものにカフェインよりずっと強い抗ウイルス作用があるのです。それを発見したのは和歌山医科大の小山一先生でした(第21話を参照)。C型肝炎の治療中にコーヒーを勧める大学病院も現われました(第78話を参照)。そして筆者は、小山先生との共同研究で、コーヒーから抗ウイルス作用をもつN-メチルピリジニウムという物質を取り出しました(詳しくは → こちら)。しかし、どの成分をとって見ても、コーヒーそのものの作用の方がずっと強いのです。つまり、コーヒーの成分だけに限ってみても、相乗効果があるのです。
逆に負の疑問も次々に浮かんできます。例えば以前書いたように、コーヒーは血中脂質に良い影響を与えません(第96話を参照)。血中脂質の増加はウイルスにとってまたとない好都合なのだそうです。これが本当ならば、コーヒーを飲むとペグ/リバが効かなくなるはずです。研究者自身の悩みを論文のなかに読み取れます。
他にも色々考えられます。その内のきっとどれかが当たっていると思うのですが、結論に至るにはもう少し時間がかかりそうです。
●効く理由は解らなくても、効く可能性があって、かつ安全であるというのであれば、コーヒーの存在はC型肝炎治療にとって、夢のある選択肢になりつつある。
コーヒー研究の新たな目標は、「もっとよく効く成分ブレンド」を作ることです。
(第111話 完)
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言い伝えに耳を貸せば、間違った生活習慣を見直したり、病気を予防する食べものに気を配ったり、儲け本位の怪しい健康食品をボイコットしたり、本当に役立つサプリメントを選んだり、身体にあった大衆薬を買って飲んだり、医者にかかるタイミングを間違えないようになるのです。
日々店頭に立つ薬剤師には「患者説明の豊富なヒント」、製薬会社のMRには「社会学的くすりのエビデンス」、アカデミアの研究者には「目から鱗の研究テーマ」、そして一般消費者には「確かな情報」を提供します。NHKスペシャルで大反響のレスベラトロールなど、ほんの一部に過ぎません。