シリーズ『くすりになったコーヒー』


 前回、呼吸には2種類あると書きました。外呼吸と内呼吸のことです(前回を参照)。


●外呼吸を改善する方法は色々ありますが、内呼吸を改善する呼吸法は稀で、薬もありませんでした。


 そこで筆者が選んだ今世紀最大の医学発見は・・・、


●コーヒーの香り成分5-HMFが、ヘモグロビンを元気にして、酸素を運ぶ薬になった。


 5-HMFはカラメルの香りで、砂糖を焦がすとできてきます。コーヒーを焙煎すると、コーヒー豆の糖分が5-HMFに変わります。コーヒーにはカラメルの香りがあるのです。どんな食べものでも糖分を含んでさえいれば、熱をかけたとき必ず5-HMFができてきます。


 それだけではありません。5-HMFは、バイオマスから作られるバイオエネルギー原としても注目されています(例えば → こちら


 そんな身の回りの5-HMFが、鎌形赤血球病という重症貧血に効くという論文にはびっくりしました(詳しくは → こちら


 しかもその効き目は、“酸素を運ぶ”という生命の基本に係わるものです。こういう物質が薬になったのは初めてということも二重の驚きでした。


 図を描いて説明しましょう。


 まず図1で、5-HMFは肺の酸素をヘモグロビンにくっつける役目を果たします。ですから、肺に吸い込んだ酸素が多少不足でも、5-HMFがあればすべてのヘモグロビンに酸素がくっついてくれるのです。鎌形赤血球病の人でも同じことが起こります。



 次に図2では、まず外呼吸で肺に酸素が入ります。次に内呼吸で、酸素が赤血球のヘモグロビンにくっついて、動脈血に入ります。真っ赤な血が全身に運ばれて、そこで酸素が放たれます。空になった赤血球には酸素の代わりに炭酸ガスがくっついて肺に戻ってくるのです。



 外呼吸が不完全だと、肺に酸素が不足するので、ヘモグロビンにくっつく酸素も減ってしまいます。このとき5-HMFがあると、ヘモグロビンが元気になって、たくさんの酸素とくっつくことができるのです。


 原因がはっきりしない慢性貧血の人や冷え症の人では・・・、


●何らかの原因で、肺に入る酸素が足りない。


●何らかの原因で、酸素があってもヘモグロビンにつきにくい。


 もし酸素が不足なら呼吸法で改善できるでしょう(第14話「コーヒー深呼吸」を参照)。しかし、もし酸素がくっつきにくいなら、深呼吸や腹式呼吸だけでは治りません。


 これまでヘモグロビンを元気にする薬はありませんでした。5-HMFの薬理学は、まだ始まったばかりです。正に「氣の薬理学」の誕生です。一方、今の所、5-HMFを含む飲みものや食べものが身体に悪いという話はありません。逆に、5-HMFを最も多く含んでいる梅肉エキスを飲んだ人が、冷えが治まったとか、身体が温まったと感じることはよくあるのです。


 インスタントコーヒーにも5-HMFが含まれていますが、暖かい飲みものを飲んで身体が温まるのは当たり前なので、この場合はあまり参考になりません。


【コーヒーメーカーの方へ】5-HMF入り缶コーヒーを作ってください。ネスカフェゴールドブレンド5グラム程度を溶かしたものでも結構です。そして、身体が温まるかどうか確かめてください。


【梅酒メーカーの方へ】梅酒(または梅ジュース)に梅肉エキスを加えてください。夏なら冷やして飲めばきっと美味しいと思います。身体が温まる健康飲料ができるでしょう。


(第107話 完)


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昔からの言い伝えを侮ってはいけない!
「1日30種類の食材を食べていれば病気にならない」…昔からの言い伝え
「必須栄養素をガッチリ食べてカロリー制限していれば健康寿命が延びる」…先端科学
どちらも同じことを言っています。
言い伝えに耳を貸せば、間違った生活習慣を見直したり、病気を予防する食べものに気を配ったり、儲け本位の怪しい健康食品をボイコットしたり、本当に役立つサプリメントを選んだり、身体にあった大衆薬を買って飲んだり、医者にかかるタイミングを間違えないようになるのです。
 日々店頭に立つ薬剤師には「患者説明の豊富なヒント」、製薬会社のMRには「社会学的くすりのエビデンス」、アカデミアの研究者には「目から鱗の研究テーマ」、そして一般消費者には「確かな情報」を提供します。NHKスペシャルで大反響のレスベラトロールなど、ほんの一部に過ぎません。