シリーズ『くすりになったコーヒー』


ダイエットしたい人にも色々です。例えば前回第4話に書いたような色々です。


① 糖尿病は気にならないが、ダイエットには成功したい

② 太ってはいないが、糖尿病が気になる

③ 肥満と糖尿病が、両方とも気になる


 ちょっと前の時代に、日本でも肥満な人が増え始め、「このまま放置するとみんなデブになる」と言われました。メタボリックシンドロームの新語も生まれ、厚労省は「糖尿病で医療費が崩壊する」と言って世間を煽りました。以来「メタボ」の三文字を知らない日本人はいなくなったのです。


 この空恐ろしい流行語が「新語・流行語大賞」と縁がないのは不思議であり、残念でもありますが、むしろ“グー”なことかも知れません。厚労省の注意喚起もおかまいなしに「メタボ」な人は増え続け、歩調を合わせるように超有名な糖尿病医が大昔の学説を引っ張り出したりしました。


●古い学説 「古来農耕民族である日本人は節約遺伝子(倹約遺伝子とも言う)を持っていて、欧米人よりインスリンの効率が高いので、食べたものを脂肪組織に貯め込んで、欧米人より太る傾向が強い」


http://www.eps1.comlink.ne.jp/~mayus/diabetes/verication1.html


 幸運にもこの学説はウソでした。代わって昨年、今度は日本の遺伝子研究者たちが、日本人の特徴を明らかにしています。ほんの一部ですけどね。


●新しい学説 「日本人の糖尿病の原因は欧米人のようなデブではなく、インスリンの不足に原因している」


http://www.dm-net.co.jp/calendar/2008/08/007290.php


 日本人を糖尿病にしている原因は、欧米食で「太るから」ではなく、欧米食で「膵臓を弱らせるから」というのです。要するに日本人の膵臓にとって欧米食は毒なのです。


 多分?の話ではありますが、近頃の日本人は昔の日本人がほとんど食べなかった肉や動物性脂肪など色んなものを食べるようになって、そのなかの何かが「日本人の膵臓を弱らせている」と想像できます。この謎を“極め”なければなりません。


 さて、実験用の糖尿病動物を作るには、毒で膵臓を弱らせます。そのとき使う強力な毒は、糖尿病研究者なら誰もが知っているアロキサンとストレプトゾトシンです。
驚くべきことに、これとよく似た化合物が身体のなかで勝手にできてくるのです。


●肉類に多いアミン + 野菜に多い硝酸塩または食肉添加物の亜硝酸塩 → 体内化学反応 → ニトロソアミン ⇌ スーパー亜硝酸 → 癌その他の臓器傷害


http://www.health.ne.jp/word/d5032.html


http://www.jc-angiology.org/journal/pdf/20034311/685.pdf


 でも、こういう研究は地味なので研究者が少なく発癌以外のデータが不足しています。確実に言えることは、狩猟民族だった欧米人は、長い年月をかけて肉食に慣れた遺伝子を手に入れたのに、稲作中心だった日本人は肉食に対する抵抗力が未完成です。


 もしこの予測が当たっていれば、日本人は「太らなくても糖尿病になる」という新学説を上手く説明できます。さて原因が解ったので今度は解決策を探りましょう。


 肉食由来のニトロソアミンから発生する毒は「スーパー亜硝酸」と呼ばれ、活性酸素を遥かに凌ぐ超過激な体内酸化剤です。でもこれは活性酸素なしにはできてきません。だから活性酸素を抑えれば、スーパー亜硝酸の被害を受けることもなくなります。この辺に予防薬への期待が生まれてくるのです。


 ではその薬は何かと言いますと、ちょっと専門的ですが、抗酸化薬と抗炎症薬の2つです。幸いなことにコーヒーにはどちらも大量に入っています。


●コーヒーの抗酸化薬は、カフェ酸


●コーヒーの抗炎症薬は、カフェイン


 製薬会社もこの2つをモデルにして新薬を作ろうとしています。今や糖尿病予防は「カフェの時代」になったのです。


 でもちょっと考えてみて下さい。製薬会社は何故カフェ酸やカフェインをそのまま糖尿病の薬にしないのでしょうか? 答えは前回と同じく、消費者がそんな新薬は買わず「コーヒーを飲んでしまう」からなのです。


 ではどんなコーヒーを飲んだら一番ヘルシーでしょうか?


① カフェ酸は生豆かごく浅く煎った豆からたっぷりとれる。でも味も匂いも面白くないので、少しは焼いてコーヒーらしくしたい。


② カフェインはどんなコーヒーからでもたっぷりとれる。


③ 香りとコクの深煎コーヒーには、抗メタボのニコチン酸とよい香りのメイラード化合物も入っている(第2話参照)。


それでは、ダイエットしたい人、する必要がない人、どんな人にも勧められる「栄養成分ブレンドコーヒー」を作ってみましょう。


☆☆☆処方箋1(浅煎タイプ)


ミディウム/フルシティー  ブレンド比7:3


1日2〜3杯 朝昼晩


または、


☆☆☆処方箋2(深煎タイプ)


シティー/イタリアン  ブレンド比3:7


1日3〜4杯 朝昼晩


コーヒーの処方箋


 もし自分で焙煎できなければ☆☆☆処方箋をもってカフェに行きましょう。またはコーヒーショップのショウケースで豆の色を見ながらブレンドして貰うのも楽しいですよ。
それでは、使用後のご意見お待ちしています。


oka@toyaku.ac.jp


(第5話 完)



栄養成分研究家 岡希太郎による
『コーヒーを科学するシリーズ』を購入される方は右サイドバーのショッピングからどうぞ