附属病院での実証が強み


 では、今後どのようなかたちで製品化や医療現場への実装を進めていくのだろうか。同大では共同研究・開発や受託実証試験、コンソーシアムの設立、連携協定締結など、企業の状況を踏まえて柔軟に対応できるような選択肢を用意。それぞれにとって最適な体制を敷き、実用化への道筋をつけられるようにしている。対象となる新技術・新製品も、センシング・モニタリング、フードテック、スリープテック、デジタルトランスフォーメーション(DX)、ロボットなど幅広く見込む。


 企業に対する訴求点になるとにらんでいるのが同大附属病院を実証先として使えること。「臨床の場の提供で勝負する」(増田特任教授)。確かに医工連携などに取り組む企業に話を聞くと、とりわけ新規参入組の場合、「実証を行える医療機関が少ない」「そもそも病院とどうつながれば良いか分からない」といった悩み事を抱えていることが少なくない。


 だが、横浜市大では医療現場の最前線に立つコメディカルから募ったこともあり、非常に前向きな姿勢だ。増田特任教授も、「看護部長自らが『オープインイノベーションを頑張ろう』と旗振りしてくれる」と太鼓判を押す。実際、カンファレンスに参加したあるメーカーは、「病院の現場からのやる気を感じることができた」と評価する。


 コメディカルが実際に医療現場で用いることで、開発した新技術・新製品がどこまで使えるのかがすぐにわかるのもポイント。共同研究などで得たデータや実績を、実用化後、「販売促進などに使っても構わない」と増田特任教授は話す。反面、実用化や知的財産権創出などで横浜市大側の貢献があった際には一定のロイヤリティを求める可能性もあるとする。増田特任教授の言葉を借りるのならば、「長くお付き合いしていくためにも汗を流した分は還元してほしい」とのことだ。現場のモチベーションアップにもつながると理解を求める。