時間を割くという高い壁
滑り出しは上々とも言える横浜市大の取り組みだが、もちろん課題も残る。そのひとつが、必要となる費用を誰が負担するかということだ。この種の産学連携ではつきものだが、企業からの提供のほか、政府や自治体が行っている助成金などに共同提案することで対応したい意向を示す。
もうひとつが企業との協業を進めるための時間をどう捻出するか。ただでさえ多忙な医療現場だが、この春からの医師の働き方改革の影響によってさらに時間に追われるようになっている。今後、企業との間でプロジェクトにまで進展すれば、打ち合わせなどで一段と時間を割く必要が生じてくることは間違いない。その時、高い壁となり、立ち塞がってくる可能性は否めない。
増田特任教授は、8月のカンファレンスを振り返り、「医療現場で本当に困っていることを知ってもらうことができたのではないか」と意義を強調する。また、カンファレンスで挙がった課題やニーズは、「横浜市大だけではない。全国の病院で共通していることだ」とも指摘し、新技術や新製品を開発し、有効な解決策を打ち出すことにつながれば国内市場で大きな商機が見いだせることを示唆する。
新規事業創出に止まらず、「患者のQOL(生活の質)改善や医療現場の働き方改革の推進にもつながれば」と展望する。年1回程度のペースでこれからも続けていく計画だとしており、「次回は来夏を予定」(増田特任教授)しているそうだ。
今回は登壇しなかった放射線技師のようにコメディカルといっても実に多彩で、その分、埋もれている課題やニーズもまだ多くありそう。横浜市大は、良い“鉱脈”を掘り当てたのかもしれない。