院内3Dマップ作成


 今年2月、大学病院の約2400㎡にわたる3Dマップを制作した(画像3)。患者が来院前にパソコンで確認したり、来院時にはスマートフォンで現在位置と照らし合わせながら利用できる。検査室やトイレなど、問い合わせが多い場所はポイント表示され、デジタル掲示板には多くの情報が提供されている。


画像3 約2400㎡の大学病院の3Dマップはアップデートが続けられている(画像=岡山大学プレスリリースより) 


 長谷井氏がレーザー搭載カメラで撮影した、院内の各ポイントの計測データが座標(X、Y、Z)情報を基に3D空間として表現される仕組み。人が映り込まないよう、深夜から早朝にかけて院内を撮影し、数ヵ月かけてマップを完成させた。この3Dマップを活用したロボット配送の研究も進行中だ。


 22年には医療DX人材の育成を目指し、高校生を雇用してプログラミングなどを教えるプロジェクトを開始した。文部科学省が推進する「DXハイスクール」に着目し、岡山県内の高校と連携。興味を持つ高校生に放課後や休日に大学に通ってもらい、院内3Dマップの掲示板作成やメタバース開発にも携わってもらった。


「理系に進むと工学系を選ぶ人が多いですが、医療分野での技術活用を考える人が少ないです。高校生の時に病院であんなことをやったな、と少しでも覚えていてくれて、将来医療と関わる仕事を考えてくれることがあったら嬉しいです」(長谷井氏)。


 今年8月にはベネッセと連携し、療養中の高校生向けの教育プログラムを開始した。小中学生は義務教育の範囲内で院内学級のサポートを受けられるが、高校生には同様の制度がない。そのため、長期に入院すると、授業に出席できず、単位を取得できないことで留年する生徒も少なくない。「これまで多くの高校生が病気で入院し、治療だけでも辛いのに、さらに留年という困難に直面している姿を見てきました」(長谷井氏)。新型コロナウイルス禍によりオンデマンド授業が認められるようになったが、授業動画の作成は担任教師にとって負担が大きく、進行が滞っているのが現状だ。


 この状況を改善するため、長谷井氏はベネッセに、入院中の高校生が単位を取得できる教育コンテンツの制作や提供を連携して行えないかと提案。現在、全国から受講希望の高校生を募っており、病気治療中でも学業を継続できるよう支援している。