重層的支援体制整備事業という福祉制度の名前を聞かれたことがあるだろうか。市町村では「重層」という略語で現在、関心を集めている制度である(本稿でも以下は重層と表記)。これは分野、属性にこだわらず、支える、支えられるの関係性を乗り越えた支え合いを地域でつくることに力点が置かれている。
しかし、規則に拘束される公務員に対し、柔軟な運用を求めるなど、これまでの制度とは異なる考え方を内在しており、市町村には戸惑いも聞かれる。今回は重層の概要や論点を検討しつつ、柔軟な発想や運営を徹底する重要性を指摘する。