日銀の「全国企業短期経済観測調査(短観)」によると、2024(令和6)年9月の雇用人員判断指数(DI)は全規模全産業でマイナス36。バブル期の1991(平成3)年11月の調査以来の低水準で、日本は深刻な人手不足に陥っている。その一因には、社会保険の「年収の壁」がある。
パートやアルバイトなどの短時間労働者は、年収や労働時間などが一定ラインを超えると社会保険が適用され、給与から保険料が天引きされるようになる。頑張って働くよりも、労働時間を抑えたほうが手取りは多くなるという逆転現象が起こるため、「年収の壁」を超えないように労働時間の調整が行われている。実際、パート薬剤師を多く抱える薬局では、年末になると働き控えが増えて、シフトを組むのに苦労しているのではないだろうか。
今回は、この「年収の壁」に関わる健康保険の「被扶養者」がつくられた背景を探っていきたい。