美容医療クリニックが大病院を買収する——。そんな日は遠くないのかもしれない。今年9月、湘南美容クリニックを展開するSBCメディカルグループホールディングスが米ナスダック市場に上場した。日本最大の美容医療グループで国内外に166店舗を展開し、23年度の売上高は1億9300万ドル(289億円)を計上。売上高の年平均成長率は5年間で24%に達する。日本では医療法人の上場が認められていないため、米国での上場となったが、その目的は日本国内の病院を買収する資金調達にある。
グループ代表の相川佳之氏は投資家向け説明会で次のように話す。
「新型コロナが終わって国からの補助金が出なくなった。実は大きな病院がいっぱい売りに出ている。大きな病院はだいたい建物が一緒で数百億円規模。我われとしてはそこに強みである自由診療をくっつけたり、顧客管理システムで経営をしっかり立て直したりというのがやりたい」
これまでグループは借入をせずに手元資金で国内クリニックを買収して規模を拡大してきた。しかし、病院買収は規模の桁が違うということから上場して資金を集める。狙いは公的保険市場にある。「一般医療は44兆円の市場がある。この44兆円を取りに行かないともったいない」と語る。
公的保険を基盤とする日本の医療界では、たびたびトラブルを起こして世間を騒がす美容医療は邪魔者扱いされてきた。しかし、ここ数年で市場が急拡大。勢いをつけた美容医療業界が公的保険に進出する逆転現象まで起こりそうだ。