倉敷中央病院(岡山県倉敷市、1172床)は、ソーシャルワーカーが患者の転退院業務をより効率的に行えるようにするため、22年からITサービス企業のSCSKが開発したコミュニケーションツール「Dr2GO」を導入した。同院が3次救急病院としての機能を維持するためにスタートした「即日転院」を支える重要なツールであり、DXを活用して地域医療連携を促進する好事例となっている。


 最先端の医療サービスや人材育成などさまざまな取り組みで注目される倉敷中央病院は、岡山県西部の中核医療機関として、高度急性期医療や高度先進医療を担う。3次救急の機能も備え、新入院患者数は年間約2万8000人(23年度)に上る。同院の入院患者のうち約9割が自宅に戻り、1割が他の病院へ転院する。


 転院調整を担うソーシャルワーカーは20人おり、一般的な病院に比べて人数は多いものの、業務は多忙だ。国内では、転退院調整に電話やファクスを使用するが、これらの方法には平日日中にしか連絡が取れない、業務が中断される、聞き間違いなどによる認識齟齬が生じやすいなどの課題がある。


 同院はITを活用した地域医療連携システムの構築に早い時期から取り組んできた病院で、20年には病歴や治療歴、画像データを医療機関同士で閲覧できる「Kchart」と呼ばれる仕組みを整えている。この時期にソーシャルワーカーの転退院業務の効率化を図るシステム導入の必要性が院内で議論され始め、SCSKと地域医療連携ツールの協議を開始した。SCSKがスタッフにヒアリングしながら、Dr2GOの地域医療連携システムを開発した。


Dr2GOの地域医療連携システム操作画面。
電子カルテに紐づいた患者情報が表示され、転院先候補病院が表示される(左)候補病院とのチャット画面(右)
画像はSCSK提供資料より