Dr2GOの地域医療連携システムを操作する曽我室長。
複数の病院に一斉に問い合わせする機能は、スムーズな転院調整に欠かせない


製薬企業の課題解決が背景


 Dr2GOは病院にとって役立つシステムだが、意外なことに、その開発の背景には製薬企業の課題解決という目的があった。SCSKは、医療システムの提供だけでなく、調剤薬局の管理システムや製薬企業のMR業務支援をはじめとするセールス&マーケティング領域、治験領域へのシステムやデータベース構築など幅広い事業を展開しており、製薬業界とのつながりが深い。そのため、「MRの業務効率化、医師への適切な医薬品情報提供といった製薬企業が抱える課題について話を聞くなかで、これらの課題解決に役立つシステムを開発できないかと考えました」と担当者は語る。


 このような背景から、Dr2GOの最初の構想は、医師と製薬企業をつなぐ情報プラットフォームとしての役割を持たせることだった。まず、医療現場では医師の働き方改革が急務だったため、医療者同士が電子カルテを見ながらコミュニケーションを取り、共同作業を効率化できるチャットツールが開発された。また、診療ガイドラインや院内ガイドライン、医薬品情報などを横断検索できる情報検索機能もつくられた。


 さらに、医師の診療科や検索履歴を基に、AIが関連する勉強会や医薬品に関する講演会などをおすすめ表示する仕組みが備えられた。こうすることで、医師が日常的に使用するツール内に製薬企業からの有用な医薬品情報や勉強会の案内が表示され、医師と製薬企業をつなぐ効果的なプラットフォームとして設計された。これに前半で紹介した地域医療連携システムが加わり、各医療機関のニーズに合わせて使用されている。


 このビジネスモデルにより、Dr2GOは医療機関には安価で提供され、製薬企業側からの収入で運営される仕組みになっている。製薬企業にとっては、Dr2GOを利用する医師や医療機関が多いほど情報発信の価値が高まるため、SCSKは現在、より多くの病院でDr2GOを導入してもらえるよう販路拡大に取り組んでいる。


「地域医療のプラットフォームが長続きするためには、社会課題を解決できるものでなければならないと考えています。そして、その仕組みを皆で支えていくことが、今後のめざすべき方向性と考えています」とSCSKの担当者は語る。