欧・米で承認された19品目から


 欧・米承認(24年末現在、日本未承認)薬の承認順は、全て米国が先行していた。

 

【ベルズチファン/Welireg, MSD〔承認勧告段階/条件付き承認/EMA注目薬〕

説明:進行性腎細胞癌および、嚢胞や腫瘍を引き起こす稀な遺伝性疾患von Hippel-Lindau病(VHL)に伴う腫瘍の治療薬。VHLを治療する初の薬剤

Weliregの利点は、VHL 病関連の局所性腫瘍患者における客観的奏効率と奏効期間、およびeverolimusと比較して腎細胞癌患者における無増悪生存期間が改善された点。最も一般的な副作用は、貧血、疲労、吐き気、呼吸困難、めまい、低酸素症。

 

【ソタテルセプト/Winrevair, MSD〔オーファン指定(20年12月)/PRIME/EMA注目薬〕

説明:肺動脈性高血圧症(PAH)成人患者の治療薬。

PAHは、肺の動脈の血圧が異常に高くなり、長期にわたる、衰弱性で生命を脅かす稀な病気。Winrevairは、PAHの成人の身体活動能力を改善するために使用される薬。PAH患者は肺動脈の血圧が異常に高く、息切れや疲労などの症状を引き起こす。Winrevairは、身体活動が中程度または著しく制限されている患者(それぞれ WHO 機能分類II または III に相当)に、他の PAH 薬と併用して使用される。

承認理由:主な研究では、Winrevair は PAH 患者の身体活動能力を改善することが示された。安全性について、Winrevair の副作用は管理可能と考えられた。ただし、心血管の安全性(心臓または血液循環への影響)に関するデータは限られており、より多くのデータが必要。

 

【フィダナコゲン エラパルボベク/Beqvez,ファイザー】〔旧販売名Durveqtix /PRIME/条件付き承認/EMA注目薬/遺伝子治療薬

説明:Beqvezは、重度または中等度の血友病 B の成人の治療に使用される薬。

血友病 B は、第IX 因子(出血を止めるために血栓を作るのに必要なタンパク質)の欠乏によって引き起こされる遺伝性の出血性疾患。

この薬は、第IX 因子に対するインヒビター(体の自然な防御によって生成されるタンパク質)を発現しておらず、薬に含まれるウイルスに対する抗体を持っていない成人に使用される。「遺伝子治療製品」と呼ばれる先進治療薬の一種。これは、遺伝子を体内に送り込むことで作用するタイプの薬。

承認理由:承認当時、重症の血友病 B 患者の治療選択肢の大半は、生涯にわたる第IX 因子補充療法による頻繁な治療だった。

単回点滴で投与されるBeqvezは、少なくとも2年間の出血予防に効果があることが示され、ほとんどの患者が予防的第IX 因子補充療法による治療を中止できるようになった

ただし、主要研究で、一部の患者にはBeqvezが十分に効かなかったため、予防的第IX 因子療法を再開しなければならなかったことが指摘されている。さらに、Beqvezの効果がどのくらい持続するかについては不確実な点もある。Beqvezの安全性プロファイルは許容範囲内であると考えられた。

 

【弱毒化チクングニアウイルス株/Ixchiqヴァルネヴァ】〔迅速承認/PRIME/EMA注目薬〕

説明:Ixchiqは、感染した蚊を介してヒトに伝染するチクングニアウイルスによって引き起こされる病気から、成人を守るためのEU初のワクチン。

 チクングニア熱は多くの(亜)熱帯諸国で風土病となっており、繰り返し流行を引き起こしている。気候変動により、これまで感染を免れていた地域にも広がる可能性がある。

承認理由:承認当時、チクングニア熱を予防するワクチンはなかった。そのため。Ixchiq はUnmet medical needsに対応するものだった。

Ixchiq は、成人のチクングニアウイルスに対する免疫反応を引き起こし、ワクチン接種後少なくとも2年間は持続する。

承認当時、Ixchiq がチクングニア熱を予防することを示すデータはなかった。しかし、ワクチンによって誘発される免疫反応は、ある程度の予防効果をもたらすと期待されている。

Ixchiq を販売している会社(Valneva)は、チクングニア熱ウイルスが蔓延している地域で研究を行い、ワクチン接種を受けた人を Ixchiq がどの程度この病気から予防するかを評価する。安全性について、このワクチンには、弱毒化生ウイルスを含む他のワクチンで見られるのと同様の副作用がある。