ワクチン行政に「飛び火」も
一方で、Meijiの提訴が、いわゆる「スラップ訴訟」との指摘もある。大企業が一般市民を資金力と知名度を背景に脅しのような訴訟をすれば確かにそうだろう。だが、相手が国家権力の一端を担う国会議員であることを考えると、安易にスラップ訴訟とは言えないのではないか。Meijiからすれば、権力を持つ国会議員による横暴に映っているかもしれない。さすがに原口氏も、今回の訴訟をスラップ訴訟だと騒ぎ立てることはしていない。また、Meijiも一般市民を相手に同様の訴訟は起こすつもりがないことを明言している。
Meijiの小林大吉郎社長は24年12月25日の会見で、訴訟は「金銭目的ではない」と語った。そもそも55億円以上の損害と算出しておきながら、請求額は1000万円に過ぎない。勝訴したところで、名誉毀損では数百万円も認められれば高額賠償とされ、金銭目的ではないのは明らか。会社の名誉のほか社員を守ることと、顧客である医療機関との関係から訴訟を起こさざるを得なかったのだろう。
ただ、新たなワクチンを国民に理解してもらううえで起きてしまった混乱に対し、訴訟という手段を取ったことが果たして妥当だったのか疑問の余地は残る。また、原口氏が指摘するワクチン行政や価格設定の仕組み、利益相反といった指摘は問題がないとは言い切れない。訴訟とは別に、ワクチン行政に飛び火する可能性は無視できない。裁判の行方を最も気にしているのは厚労省かもしれない。