医薬品ではなく、スマートフォンやタブレットなどのアプリで患者を治療するーー。この革新的モダリティであるデジタル・セラピューティクス(DTx、治療用医療機器ソフト)の第2の商業化が今年、日本でも始まった。しかもその治療対象疾患は急速に拡大している。
生活習慣の改善によって生活習慣病や精神疾患を治療する認知行動療法の有効性は、医療現場では認められており、一部には保険適用されている。しかし、外来での「3分間診療」が常態化している日本では、医師が患者と膝詰めで十分な会話をして行う必要がある認知行動療法を実施することは事実上不可能である。
逆に言えば、日本の医療環境を整えれば、DTxの潜在需要は大きい。従来、治療効果が既存の医薬品では望めなかった依存症や発達障害、うつ病、気分障害などの精神神経疾患に対して、重要な治療手段としてDTxが期待されてきた。このほか、がんなどの術後の運動療法や生活支援など、患者に寄り沿ったかたちで生活環境を改善することで、QOL向上や再発の早期発見などDTxの実用化も迫って来た。