厳しい病院経営
病院市場は23年の4.1%増と比べると1.8ポイント伸びが鈍化した。薬価改定の影響もあるが、抗がん剤領域で市場拡大再算定を受けた小野薬品の「オプジーボ」、競合新薬やオーソライズド・ジェネリック(AG)の侵食を受けた中外製薬の「アバスチン」とブリストル・マイヤーズの「スプリセル」の大幅減少も一因となった。
それでも成長したのだからマシなのだが、一方で病院の経営は深刻だ。3月10日、日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会、日本慢性期医療協会、全国自治体病院協議会が共同で実施した「病院経営状況緊急調査」が公表された。その結果によると、24年度診療報酬改定後の6〜11月で、経常利益が赤字の病院は、前年同期比で10.4ポイント増の61.2%に増加したという。医薬品や医療材料の購入費、人件費など医業費用の伸びが医業収益を上回ったからだ。高額薬剤の購入、使用に頭を悩ませている病院経営者は、医薬品市場の伸びを苦々しく見ている。
また、製薬企業経営者の報酬が高額であることに対し、「もっと薬価を引き下げてもいいのではないか。(医薬品卸を絞り込んだ)1社流通で価格交渉もさせないなど、製薬企業はやりたい放題だ」(北関東の150床病院の院長)と怨嗟に近い声も上がっている。
薬価全面改定時にはマイナスとなるケースが散見される開業医市場だが、24年の成長は病院市場を上回った。アトピー治療の新薬が次々と登場していることが追い風となった。例えばマルホの「ミチーガ」は22年8月の上市以降、順調に成長し、24年には小児(6歳以上13歳未満)のアトピー性皮膚炎と、成人と13歳以上の結節性痒疹で使用可能な「ミチーガ30㎎バイアル」を投入した。レオファーマの「アドトラーザ」は23年9月に発売、24年4月には在宅自己注射も可能となった。24年5月には日本イーライリリーの「イブグリース」、同年10月には鳥居薬品の「ブイタマー」が参入した。
都内で皮膚科も標榜する開業医はこう話す。
「生物学的製剤をはじめ、最近の新薬は高額で効き目もあり、患者さんも治療に前向きになっている。若い世代を中心に悩んでいるので、きちんと治療をしなければならないと思う」
少し風邪気味だから、腰が痛いからと言われ、漫然と処方をしていた時代に比べれば、診療自体が大きく変化したと述懐していた。
薬局その他市場は0.8%増にとどまったが、ここは後発品の使用促進が大きい。不採算品再算定で一部の後発品の薬価が上がったものの、焼け石に水の状態だ。24年10月に実施された長期収載品を希望した患者に自己負担を上乗せする「選定療養制度」の影響は、3ヵ月程度なのではっきりと見えないが、都内調剤薬局経営者は「とにかく後発品に誘導しなければならない。しかし、その後発品が品不足で、後に患者宅に郵送する事になる。その費用や選定療養の説明、品不足への文句など後ろ向きな仕事ばかり」とぼやいていた。