振り返ると03年の参院選は経団連の別行動隊「企業人政治フォーラム」が直近では脚光を浴びた最後だったのかもしれない。実は、当時の奥田碩会長(トヨタ自動車会長)の肝いりで会員5000人のフォーラムを舞台に財界から送り込む政治家候補を選ぶ予備選を実施していた。党代表を選ぶために自民党などが実施しているあの選挙だ。財界・奥の院としては驚くほど民主的な手法である。


 念頭にあったのは奥田の持論の若手経済人の国政への送り込みであった。透明性の高い予備選で選ばれた企業人が選挙を通じて政治家に就くことができれば、フォーラムへの求心力は格段にアップする。近年自民党に目立ち、家業化の観さえある世襲議員への無言の圧力ともなる。だが、30人の推薦人が重荷だったのか、若手からはついに手が挙がらなかった。結果は、5年前の参院選で勝ち抜いた東京電力出身の加納時男、ただひとり。国政に変革という新風を吹き込む人材の発掘・抜擢が阻まれたのである。国政へ大志を抱く若手会員がいても、所属する企業の了解を得るのは並大抵ではないことが明らかになった。壮大な奥田構想の挫折であった。