透明化の後退
フォーラムの創世期は、鼓動を伝えるニュースレター形式の会報があり、それに目を通せば何をやっているのかなどの一連の情報に触れることができた。ネット時代入りでウェブサイトへ移行、それ自体は問題ないのだが、すべてのページを閲覧するにはパスワードが必要となった。会員以外で閲覧できるページはごく一部だから関心を持っていても情報には簡単にはアクセスできない。つまり、経団連の会員企業に所属し、会員にならなければ情報には触れることができないのである。これは経団連側からみれば都合がよいだろう。会員を増やす好機となる。一方で情報公開、透明性からは逆行する。
筆者のような研究者にとっても情報の入手に大きなハードルができた。会報は自由に入手できたかつてに比べると透明度が極端に落ちた。何か良からぬことを企んでいるのでは、と憶測が生れれば経団連も本意ではないだろうに。
なぜこのような透明性を欠く態勢になったのか。この理由も安倍晋三首相時代に続いた自民党のひとり勝ち、安倍一強を指摘できるだろう。政策実現をめざす経団連にとっては自民党を相手にしていればよかった。内輪で完結した。これが続いたのである。
では、自民党が少数与党に転落した現在、フォーラムを創設時のように全政党を対象とした活動に転換するのか。片野坂会長からは「7月の参院選の結果をみて判断する」との答えが返ってきた。自民党の勝利で石破一強の復活する可能性がなお残っているというのだろうか。もっとも、連敗したらどうなるのか。30年前へ舞い戻るということなのか。だとすれば手法を再検討する必要が出てこよう。いばらの道も想定される。激動の季節に入ったのかもしれない。(一部敬称略)