「創造性とスピード」を理念に掲げる株式会社ニューロシューティカルズ(略称NCI)は、2009年に設立された医療機器の開発ベンチャーだ。事業の柱は、新規医療機器の開発、受託開発および薬事承認取得およびライフサイエンス系の企業への投資。「MEDICA 2022」の東京パビリオンには、タムガイド®(経鼻胃管先端位置確認システム)を出展した。
※このシリーズでは、東京都の支援を受けて世界最大級の医療機器見本市「MEDICA/COMPAMED2022」に出展した、都内の中小ものづくり企業及びスタートアップ企業(SMEs:Small and Medium Enterprises)の技術と強み、ビジョンを紹介する。
■経鼻胃管、新たな安全確保策の登場
経鼻胃管は、鼻から胃にチューブを挿入して栄養剤を投与する経腸(経管)栄養法の一種だ。経腸栄養法は、消化管は機能しているが咀嚼・嚥下障害や口腔内の炎症などがあり経口摂取が難しい患者に行う。経鼻ルートは、意識レベルに問題があるときや持続投与が必要なとき、かつ、比較的短期間(4~6週間以下)での終了が予測されるケースで選択される。使用する栄養チューブは5~12Fr(外径1.7~4mm)が主流である。
挿入時にチューブ先端位置を確認する主な方法として、①胸部X線撮影、②経管栄養用シリンジで空気を注入した上での心窩部の気泡音聴診、③吸引した胃内容物のpH確認(5.5以下)がある。②と③はX線設備のない環境でも実施可能だ。①は最も確実性が高いが、読影で判断を誤る可能性は残る。②は広く行われてきたものの不確実性が再三指摘されており、複数の方法での確認が推奨されている。気管への誤挿入による死亡事例も報告されていることから、特に、嚥下障害、意思疎通困難、身体変形、挿入困難歴などがある場合は、高リスクと認識して対応するよう注意喚起がなされてきた。しかし、チューブ先端位置を確認する基本的な方法に長らく変化はなかった。
こうした状況の中、2021年2月に薬事承認されたのがタムガイド®だ。さらに、翌22年には診療報酬「経鼻栄養・薬剤投与チューブ挿入術:180点」について、「在宅などのX線装置が活用できない環境下において、経鼻栄養・薬剤投与用チューブの挿入に際して、ファイバー光源の活用によりチューブ先端が胃内にあることを確認する場合にも算定される」ことになった(保医発1028 第3号)。
一見シンプルなこの機器を生み出した発想と技術、この製品に限らずNCIが基本としているプロジェクト化手法について、同社代表取締役社長の三池信也氏および渉外部の鳥井紘一氏、タムガイドを製造する沖縄ニューロシュ―ティカルズ(NCIO)取締役の弟子丸佳久氏に聞いた。