成果物を抱え込まない
今回の成果によって、臨床現場や屋外など、免疫測定の価値は高いのに使えなかった場面で、抗体さえ市販されていれば何とかなる未来が見えてきた。
ただ現時点では、血清など多様な抗体を含む検体に使うと、Zドメインで抗体の交換が起こって、何を検出しているのかわからなくなってしまうため、市販されていることの多いマウス由来抗体へZドメインの結合特異性を上げていく改良に取り組んでいるところだ。また、洗浄操作と並んで免疫測定のハードルとなっている検体の前処理を不要にするアイデアも温めている。
加えて24年度には、冒頭で述べた「標的分子ごと個別かつ緻密」な「分子設計」を、機械学習を活用した「Flashbody」の抗体組み換え(DNA変更)で実現できるようにするとの提案が、科研費の基盤研究(B)で採択されている。
これらの取り組みが順調に進めば、どんどん使い勝手のよい洗浄操作不要の免疫測定プローブが生まれてきそうだ。
なお北口氏は、「自分のつくった成果物が、知らないうちに思いもよらない用途で使われていてこそ、ポテンシャルは引き出されるだろうし研究者冥利にも尽きる」との考えを持っており、開発してきたプローブや測定キット、センサー発現細胞など、ほとんどを専業メーカー経由で販売している。北口氏に連絡しなくても使えるというわけだ。
ちなみに今回の測定系に関しても、「もう少しレスポンスの良い」プローブを使ったキットが、すでに23年中にフナコシから発売済みだ。
ロハスメディア 川口恭