■同じ比重で日本、欧米、アジアを狙う
―「MEDICA2022」の東京パビリオンでの手ごたえは。
まだ具体的に結実したものはないですが、出展を契機に前向きに交渉しているディーラーはいくつかあります。
―他の展示会等への出展経験は。
何度もあります。主に、ASTRO(American Society for Radiation Oncology、米国放射線腫瘍学会)やPTCOG(Particle Therapy Co-Operative Group)といった学会の展示会です。学会の展示会はエンドユーザーというか顧客探し、MEDICAなどの展示会はディーラー等との販売連携が目的です。
当社はまだ歴史が浅いのですが、私自身はこの業界で23~24年やっています。放医研時代には、民間企業と共同開発をしたり、企業ブースにアドバイスをしたりしていました。関連分野の多くの医師とも顔なじみです。ですから、学会は単独出展してもホームグラウンドのような感覚です。しかし、展示会ではニューカマーなので、東京都のような出展支援はありがたいです。
―公的な支援について「こういうものがあればよい」という提案は。
率直なところ、いちばん期待したいのは投資、出資かと思います。日本の場合、少数の有志が集まって立ち上げるベンチャーの多くは資金がなく、医療機器といっても大掛かりな装置の開発には取り組めません。その点、欧米では、当社のライバルに相当するような放射線治療のベンチャーが最初から100億円単位で集めています。当社の事例で言うと、取れているデータや内容からすれば欧米でも同時申請できるレベルです。ところが、申請資料を用意する人手や、海外申請に必要なコンサルタントへの費用というハードルがあり、すぐには着手できません。そういうところにいちばんお金を使いたいというのが本音です。
―今年2月にタイのタマサート大学への超小型陽子線治療装置導入が決まったとのことだが、今後の海外展開におけるアジアの位置付けは。
海外展開の比重は、アジア、北米、ヨーロッパが全部イコールです。基本的には、純粋に患者統計でがんが多い国・地域が全てターゲットです。ただ、アジアは今後世界最大の陽子線治療市場となることが予測されており、地理的に近く営業しやすいという側面はあります。マレーシアやインドネシアには陽子線治療装置がまだ1台もありません。そういう国が、国立がんセンターのような施設からまず1台、2台導入する可能性はあると思います。
超小型陽子線がん治療装置は、本当に先端の医療機器で、今後10年かけて700台くらいの販売計画を立てていますが、海外と国内が600台と100台の割合です。欧米もまだポテンシャルが相当ありますし、海外展開をしっかりやっていきたいと考えています。