どうも最近見る映画は高年齢の主人公のものが多くなっている気がしますが、いろんな角度から描いていているシニアの世界は興味深いものばかりでした。


『83歳のやさしいスパイ』は異色のドキュメンタリーです。探偵会社の潜入捜査の仕事に応募して、実に真面目に任務を遂行するセルヒオが実にいい味を出していて、よく彼を抜擢したと思いました。特養ホームの入居者は世界のどこの人々であっても、同じような問題があるものだというのがよくわかります。この映画のコメントに家族に連絡を取りたくなるというのがありましたが、まさにそんな気にさせてくれる作品でした。


『ベル・エポックでもう一度』は時代の波に乗れず、鬱々としている主人公が妻から愛想を尽かされ、家も追い出されますが、息子からプレゼントされた〝時間旅行〟で運命の女性と出会った1974年の世界を体験して…というSFではなく、セットの中で若い自分になり切るという面白い設定でした。またこの74年という時代を今見ると、こんなだったかと改めて思い返せたのも見どころ。


 カナダの『やすらぎの森』は孤独な老人たちの話ですが、厳格な父親によって隔離生活を強いられていた女性とその家族の話はどこでも起こる問題だなと思いましたし、森で半共同生活を営んでいる老人らのほとんど語られないそれまでの過去を想像したり、いろいろ考えさせられるものでした。



 さて、ついでに過去に観た作品をいくつか。


 妻が病に侵されたために変わりゆく日常を描いた『愛、アムール』(2012)は、懸命に妻を支える夫と彼もまた歳をとっているが故に思うようにいかないというのが何とも切ない話。また、『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』(2013)は大金を進呈するという胡散臭い手紙を信じる頑固な父親と関わりを避けていた息子とのロードムービーで、不器用な親子の背景が見え、これも万国共通のテーマでした。ドイツの『陽だまりハウスでマラソンを』(2013)も老人ホームが舞台で、日本とさほど変わらない人間模様が描かれていました。ちょっと変わったところで『100歳の華麗なる冒険』(2013)は、とにかくはちゃめちゃで元気な主人公を見ているだけでこちらもユカイで面白い話でしたし、『ラッキー』(2017)は飄々とした主人公の日々を通して、やがてすべての人に訪れる最後の時間を思い巡らすものでした。



 映画で世界のシニアを知るというのも自分のそう遠くない日々の参考になる気がします。