だが私は、こんな短期間に、投票総数の45%を集めた「民意」に、やはり危うさを感じた。 


 目の前で90度のお辞儀を繰り返す謙虚な男と、パワハラなどの疑いをかけられた傲慢で冷酷な男の、いったいどちらが本物の斎藤氏の姿なのか。 

 

●謙虚さと冷酷さのどちらが本物? 

 

 実は演説中の斎藤氏を見て気になったことがある。彼はマイクを常に両手で握っているのだ。姫路での街頭演説だけでなく最終日の三宮でも、両手で握り続けた。3年前の知事選ではどうだったのか。ネットで探して見つかった3本の動画では、ほとんど片手で持っている。両手より誠実さと謙虚さに欠ける印象になるから不思議だ。斎藤氏も、そのことを意識していたのだろうか。 


 そういえば、百条委員会での聴取や、連日のように開かれていた会見でも、斎藤氏は冷静に、そして誠実に対応していた。記者の意地悪な質問にも嫌な顔ひとつせずに謙虚な姿勢を崩さなかった。 


 かたや百条委員会が実施した職員アンケートの回答を読み返してみると、まったく別の顔が浮き彫りになってくる。 


 斉藤氏と同じ総務省出身の職員は実名で具体的に答えている。ある会議で、彼は叱責を受けた。座席の卓上名札の置き方が斜めになっていたのだ。このほかに、何度も「厳しい指導・叱責」を受けているが、彼は業務上の必要な範囲内での指導・叱責であり、「パワーハラスメントを受けたという認識はなかった」と答えている。が、地域づくり懇話会の事前レクの席上、県職員幹部に対して机を叩いて激怒した件を挙げて、「県職員への指導・叱責の仕方としては、適切ではなかった」と答えている。